一桥教员の本
哀しき恋を味わう : ドイツ文学のなかの<ダメ男>(NHK こころをよむ)
![]() |
久保哲司着 |
着者コメント
倉田真由美さん(一桥大学卒)の大ヒット漫画『だめんず?うぉ~か~』に登場する「だめんず」は、働かない、酒や賭けごとに溺れる、浮気をする、暴力を振るう、といった男たちでした。私がこの本で取り上げた文学作品の主人公は、そうした「ダメ男」とはかなり違います。ゲーテ『若きヴェルテルの悩み』の主人公は教養があり才能に恵まれた若者、シラー『ドン?カルロス』の主人公は国民に人気のあるスペインの皇太子、ハインリヒ?マン『ウンラート教授』の主人公はエリート校の先生、トーマス?マン『ヴェネツィアに死す』の主人公は国民的大作家、そしてヴァルザー『マリーエンバートの悲歌』の主人公は、ヨーロッパの文学界に君臨する王者ゲーテです。ビューヒナー『ヴォイツェク』の主人公(貧しい兵士)を除けば、およそダメ男ではなさそうなのですが…… 恋愛においてはどんな男性でも悩み苦しみ、ダメ男になる。そうした意味でのダメ男のこころを、ドイツ文学の作品を例に、読み解こうと試みました。また、取り上げた作品のオペラ化、映画化、バレエ化などにも触れてみました。