一桥教员の本
《オーストリア哲学》の独自性と哲学者群像 : ドイツ哲学との対立から融合へ
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岛崎隆着 |
着者コメント
従来《オーストリア哲学》というのは、同じドイツ語圏であるということで、何となくドイツ哲学の中に含まれて来ました。しかし中世以後ハプスブルク帝国が支配し、神聖ローマ皇帝を代々輩出したオーストリアと、近代のプロイセンを中心とするドイツとは異質であり、その哲学傾向も異なります。《オーストリア哲学》は、カント、ヘーゲルらのドイツ哲学に敵対して、言語分析、言語批判を特徴とし、科学哲学の傾向も強いです。その着名な哲学者はウィトゲンシュタイン、さらにカルナップらの論理実証主義者、ブーバー、マッハらですが、現代哲学の《言語論的転回》というのは、オーストリアのマウトナーという言語哲学者の大着から始まっています。本書はウィーン世紀末の文化背景の中で《オーストリア哲学》の思想家群像を議論しつつ、ドイツ哲学との関わりも議論します。本書は日本で初の試みといっていいでしょう。