一桥教员の本
「てにはドイツ語」という問題 : 近代日本の医学とことば
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安田敏朗着 |
着者コメント
「てにはドイツ语」ということばは耳惯れないかもしれません。これは近代日本の医学教育、とりわけ东京大学を轴としたエリート教育がドイツ人によりドイツ语でなされたことが起源となっています。ドイツ人が医学教育にかかわらなくなっても、日本人がドイツ语で日本人に医学教育をおこなっていきました。しかしそれではなにかと不便なので、ドイツ语の単语を日本语の语顺でならべて助词などでつないでいく特殊な言语変种が発生しました。一见便利なようですが、时代がくだり、ある种の言语ナショナリズムがたかまりをみせると、「てにはドイツ语」も问题化されていくことになります。「大东亜共栄圏」にひろめる「大东亜医学」が提唱されるにいたると、この倾向はさらにつよくなりますが、败戦后、ドイツ医学が急速に影响力を失うと、「てにはドイツ语」は姿をひそめていき、いまでは医疗従事者の隠语にひっそりと残っているような状况です。本书ではやや地味なテーマを掘り下げてみましたが、ことばの问题をつうじて学问のあり方を考える、あるいは医疗におけることばの问题を考えるひとつのきっかけになれば、と思います。