一桥教员の本
日常の読書学 : ジョゼフ?コンラッド『闇の奥』を読む
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中井亜佐子着 |
着者コメント
多くの人にとって、読书というのはとても日常的な行為です。わたしたちは日々、社会や生活の雑音を叠骋惭として聴きながら、さまざまな场所で、さまざまな书物のページをめくっています。本书のねらいは、わたしたちの日常の読书、とくに「文学作品」と呼ばれるような书物を読むことの意味や方法について、『闇の奥』(1899年)という一册の小説の読解をつうじて考察することです。
『闇の奥』の作者、ジョゼフ?コンラッドは、ウクライナ生まれのポーランド人で、のちにイギリスに帰化した英语作家です。小説家になる前は船乗りとして、世界各地を访れました。『闇の奥』は、ベルギー王レオポルド2世の统治下にあったコンゴに赴任したときの経験をもとに书かれた作品です。刊行后120年ものあいだ、この小説はいろんなふうに読まれ、解釈され、批评されてきました。植民地支配の残酷な现実を告発する书だとみなされたこともあれば、普遍的な人间心理を描いた物语だと解釈されたり、物语理论や批评理论にとって絶好のテスト?ケースとして活用されたりしてきました。女性差别的、人种差别的な本だと批判を浴びたこともあります。本书では、この『闇の奥』といっしょに考え、そこから学びながら、「読むこと」とはいったいなんなのか、あれこれ模索しています。
小説を一册読んだところで、わたしたちの住まう现代社会の诸问题がいますぐどうにかなるわけではありません。けれども本を読むことは、日常のなかにありながら少しだけ日常を离れることでもあります。読み终わったとき、これまでは见过ごしてきた问题がはっきりと见えてくることもあるでしょう。そうやって日常を再発见することが、わたしたちが行动を起こすきっかけになるのではないでしょうか。