アルコールについて
アルコールについて
アルコ-ルについて知っておくべき知识をまとめてみました。
1.アルコ-ル浓度と酩酊の段阶
酔いと血中アルコ-ル浓度には相関があります。ここでは、分かりやすい4段阶の分け方について説明しましょう。
まず第1段阶の「ほろ酔い」は、血中アルコール浓度が0.05~0.1%を指し、日本人の平均では日本酒だと1~2合、ビール大ビンだと1~2本、ウイスキ-奥だと1~2杯程度を短时间に(以下同じ)饮んだ场合です。阳気でお喋りになりはしゃぐなど、酒の场でよく见かける状态です。本人は酔っていないつもりですが、思いがけない事故など起こしやすいといえます。
第2段阶の「酩酊」は、血中アルコール浓度が0.1~0.2%を指し、日本酒、ビール、ウイスキーをほぼ第1段阶の2倍ほど饮んだ场合です。足がふらつき、感情が不安定で怒ったり泣いたりしやすくなりますし、记忆がとぎれます。これは非常に酔っている状态で酒场などでもそう见かけません。バランス感覚が麻痺し、転倒などの事故を起こしがちですが、喧哗などのトラブルもよくみられます。
次の「第3段階」の「泥酔」になると、血中アルコール濃度が0.2~0.3%を指し、平均的には日本酒だと3~5合、ビール大ビンだと4~5本、ウイスキーWだと4~6杯程度飲んだ場合です。全く立てなくなりますし、何をいっているのかわからないほか、激しく吐くなどが一般的です。これは正体ないというより危険な状態で、自分の吐いたものが気管支に入って窒息したり、電車や車にひかれたり、眠り込んで凍死することもみられます。絶対に1人にしないこと、なるべく早く救急車などで病院へ連れて行くことが大切です。
第4段阶の「昏睡-死」では、血中アルコール浓度が0.3%以上を指します。平均的には、日本酒で5合以上、ビール大ビンで5本以上、ウィスキー奥で6杯以上程度を饮んだ场合です。通常は一気饮みで典型的にみられ、揺っても呼んでも起きません。外伤性脳损伤や、自分の吐いたもので窒息するほか、ついには、呼吸中枢が麻痺して死に至ります。直ちに救急车を呼ぶことが肝要です。
2.酒に强いとは
奈良渍で真っ赤になる人もいれば、2合饮んでも平気に见える人がいます。この违いはどこにあるのでしょうか?
肝臓のアルコ-ル代谢速度が早いのでしょうか?これはせいぜい1.5倍に过ぎず、1时间のアルコール分解能力7驳が10驳になってもそれほど大きな変化はないはずです。
それで现在は一种の学习効果とも考えられています。つまり同じ様に中枢神経の麻痺状态はあるが、ふらつかずに上手に歩けるように学习したので酔っているようにみえにくいのだということです。さらに脳の神経细胞の膜の変性が起こってアルコールの影响に钝感になっているのだという説もあります。微妙な神経繊维の膜を変化させるという犠牲を払って、アルコールに耐えられるようにしているわけです。反応性に富むのが本来ですから脳の机能を犠牲にしているわけです。したがって「お酒に强い」ということは别にその人が男らしいとか豪快であることを意味しないのです。弱いことが女性的であるということでもなく単に酵素の问题であるに过ぎないのです。
脳のアルコール浓度は血中アルコール浓度に比例しますから、体重の大きい人は同じ量の酒では脳の浓度は低いことになります。
3.女性?未成年者とアルコ-ル
女性は体重が少なく、さらに水分が体重の55%と低いために同じ量のアルコールで血液浓度は高くなります。またホルモンの影响もあり、女性は男性の2分の1程度のアルコール量で依存症になったり、その他の障害も生ずるとされています。他にも女性では妊娠中の饮酒が胎児に大変な悪影响のあることが知られいます。男女ともこのことをよく知っている必要があるといえます。最近は女性の饮酒倾向が强まっており、欧米などでは弊害がよく指摘されています。一方、未成年者の饮酒倾向も强まっていますが、アルコールの弊害は年齢が低いほどより着しく、欧米などでは大きな社会问题になっています。日本でも近年その倾向が强まっています。
5.酒との健康的なつきあいかた
1)一気饮みは死にいたる
古来の日本人の酒の饮み方は、集団で祭の时に饮むもので、収穫の感谢として饮まれていたといわれます。毎日酒を饮むようになったのは豊かな戦后の事でしかありません。昭和40年から平成3年までのアルコール消费量は2.2倍に、成人1人あたりの消费量は1.5倍になっています。また大量饮酒者は2倍になっているのです。
この様な大量饮酒时代は日本人にとって初めてのことであり、したがって饮酒の规范も确立していないのです。豊かな时代の若い世代は、容易に大量のアルコールが购入できる経済能力を持っています。饮み方を知らず、危険性も知らないため、大量の一気饮みが続く可能性が强いのです。一気饮みが危険であることは上述したように血液浓度の上昇から理解できると思います。日本酒1.2リットルを一気に吸収すると50%は死にいたります。点滴の瓶に纯アルコールをいれて全开で静脉に流し込むのを想像してください。もし大量に酒を饮もうとしても、时间をかけてゆっくり饮むと、ある段阶でそれ以上コップを口に运ぶことも困难な状态になり、それでブレーキが自然とかかるわけです。一気に酒を饮むとそのようなブレーキのかかる前に死へ一直线で进むことになります。
通常では死に至らない血液浓度でも、呕吐して吐物が気管につまって窒息死したり、屋外で寝込んでしまって、冻死するなどという、偶発的に见えるが、确実にアルコールの影响である死がおこります。阶段から落ちて硬膜下血肿で死亡することもあります。昏睡していても酒で寝ていると考えて発见が遅れるのです。自ら一気饮みはしないように、また他人に强要しないようにしてください。
2)どんな症状で救急车を呼ぶか
ここで一般常识を持てるために、具体的にどんな症状が出たら危険で救急车を呼ぶかについて、ごく要点をあげましょう。
上述の1)で段阶を説明しましたが、生命の危険が始まるのは第3段阶の泥酔からです。この时期は、脳全体が麻痺をきたすため、意识はなく、呼んでも返事をしない、四肢が麻痺して动くことができず感覚もなくなってしまいます。体温は下がって冷たくなり、脉は弱く速くなるほか、呼吸も弱まってきます。こうなりだすと、そろそろ救急车を呼ぶ準备をしたほうがよいが、次の第4段阶の「昏睡-死」になると、上记の症状が一层顕着になるほか、感覚もなくなって腕、腿などの感じやすい部位を强くつねっても颜もしかめず反応しなくなります。また、眼が散瞳し、ライトなどて光を当てても(対光反射という)反応しなくなります。こうなると生命の危険が强まっており、直ちに救急车を呼ぶ必要があります。その际、救急车のセンターからどのくらい离れているか、道路の混み具合などを考虑して、早目に连络するのが肝要です。
なお、例年保健センターで扱った酩酊は、统计上は泥酔となっていますが、多くは昏睡であり、そのまたかなりの部分は生命の危険が强まった昏睡です。およそ统计人数の半数は危険だったといっても过言ではありません。
3)食事しながら谈笑しつつ饮む
自己の酔いの程度をはかりながら适量を楽しく饮むということです。
胃の中の食べ物はアルコール吸収の速度をゆっくりと遅くさせるのです。饮酒时に空腹だと、肠に送り込まれる速度が速くなり、血液への吸収が急速になるからです。さらに胃粘膜に高浓度のアルコールが直接に接触すると胃粘膜を伤害します。これは空腹时に强い薬を饮むのとおなじです。
4)度数の高い酒は割って饮む>
これは消化器の粘膜へのいたわりと、アルコールの吸収をなるべく遅くするためで、なるべく割って、雰囲気を楽しむことを第1义にするのです。
5)自分の适量とペ-スを知っておく
それぞれの人の体重や酵素量やアルコール代谢速度に応じて适正な量があり、体调によっても変化します。それを把握して自分のペースで饮むことが大切です。
6)异常酩酊の人には勧めない
时に饮酒が进むと攻撃的になったりして普段の人格と违う面を见せる人がいます。アルコールによる脳の麻酔ー机能低下のためであり、意识障害が强いわけです。周囲の人が怪我をしないことと、本人にも事故などのないようにする必要があります。车のはげしい道路にふらりと出ていったりすることもあります。翌日诚実に前夜の酩酊の様子を话してあげるのが不可欠です。记忆がないので深刻な反省につながらないのが普通だからです。
7)翌日にはアルコ-ル浓度0になるようにきり上げる
アルコールは7驳谤しか代谢されないのです。夜12时に50驳谤のアルコールがやっと朝7时に起きて出勤するまでに代谢されている计算になります。これは体重60办驳の人では 0.1%の浓度であり、図ー2のように「ほろ酔い」程度でそれ以上の酔いは翌日に残るわけです。适度に切り上げることを心掛けてください。
参考のために
1.アルコ-ル事故と问题饮酒
アルコールに関して医学的に问题になるのはアルコール依存を除くと、アルコ-ル事故と问题饮酒です。いずれも个人レベルの问题で、アルコ-ル事故とは単発の望ましくない结果をみた饮酒をいい、自己や他人に迷惑をかける事故を引き起こす可能性のある饮酒パターンを长期的に続けていることを问题饮酒といいます。
しかし、新入生歓迎や大学祭などで大量一気饮みを例年のごとく続けているならば集団として问题饮酒といわなければならないでしょう。つまり大学生は时に问题饮酒集団になるといっても言い过ぎではないかもしれません。
2.酒は食べ物か嗜好品か薬か
食べ物とは日々の行動のエネルギーと体を構成している成分の維持のために摂られるものです。酒はカロリーがありますからエネルギーにはなるわけですが、それを主目的に飲むものでは、食べ物とはいえません。嗜好品は、そのときの味や口あたりを楽しむもので食べ物としての要素はありますが、酒は味よりも酔いを求めるという意味で中枢神経への効果を期待した薬物であると考えるべきものです。
薬は、生体の成分を補うもの(ビタミンやホルモン、輸血など)と生体の代謝経路を遮断して効果をあげるものとがあります。後者は基本的に「毒」であるといえます。見掛け上機能があがったかにみえることはありますが、それは抑制しているところを遮断するためあがったかに見えるのです。つまりブレーキ経路を遮断することでアクセルが働いたかのようにみえるわけですが、細胞レベルでは「毒」として機能していると考えてよいのです。アルコールは中枢神経の抑制機能をもった薬物であるわけです。神経レベルでは神経細胞の膜の電位の活動性を抑制する作用があるとされており、アルコールは、薬理学的には手術で使う中枢神経麻酔剤と同じ項に分類されます。麻酔剤と違う点は、意識喪失にいたる前の発揚期が長く、致死量と意識喪失にいたる量が接近していてとても麻酔にはつかえないということです。
つまりアルコールは使いにくい中枢神経麻酔剤であり、基本的には薬物であり「毒」だということを再度强调しておきましょう?
3.アルコ-ルの代谢経路
薬であるならアスピリンのように「効能书き」があって使用上の注意が添付されていなければなりませんが、そのようなことは勿论されてはいません。しかし现代人としてアルコールの体内での运命について知っておくべきでしょう。経口的に摂取されたアルコールは主として小肠で吸収されます。残り20%が胃粘膜で吸収されるのです。空腹时には速やかに肠におくられて吸収されるために酒の酔いが早いわけで、血液に含まれて全身に分布します。体重60办驳の男性の水分量は体重の60%で全身に36办驳の水があると考えられます。そこにアルコールが溶け込むというわけです。日本酒180尘濒を饮んだとして血液浓度はどうなるか计算してみましょう。図-1のように0.06%の血液浓度になります。
酔いとアルコール血液濃度は平行関係があり、0.06%は「ほろ酔い」に相当します。泥酔期は0.2%であらわしますが、これは72grのアルコールが体内にあることで、日本酒では72grつまり600mlを一気に飲むとこの濃度になる可能性があります。 半数が死亡する可能性のある量をLD50といいますが、アルコールの場合は0.4%といわれています。これは日本酒1200mlに含まれるアルコール量です。
もちろん短时间で饮むことはまれなことで、时间をかけながら饮み、同时に1时间あたり7驳谤の体内のアルコールを酸化ー代谢して炭酸ガスと水にしていきます。とはいえ泥酔期のアルコールを代谢するのに9时间かかるわけです。つまり1时间ずつ0.02%の血液浓度を低下させることができます。代谢能力には个人差はありますがせいぜい毎时10驳谤の代谢ですから、大酒の翌日は血液内にアルコールは残存しているわけです。
アルコールは大部分が肝臓で代谢されます。まずアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに変化し、次の段阶にアルデヒド脱水素酵素により酢酸に変えられます。酢酸はブドウ糖の代谢回路に入り水と炭酸ガスになります。アルデヒド脱水素酵素には、アルデヒド浓度に応じて作动が异なる2种があり、日本人も含めて东洋人の50%は低浓度で働く酵素を先天的にもたない人がいるのです。このため少量のアルコールで真っ赤になったり动悸がしたりするのです。それでも无理に饮むと死の危険を伴ないます。このような人は酒に弱いことになりますが、これは遗伝的に决まった酵素の量によるものです。
アルコールは薬ですから酒をアスピリンと言い替えて考えてみたらどうでしょう。 「あなたはアスピリンに強い豪快なかたですね」とか「おれの注いだアスピリンがのめないのか」などという言い方が滑稽だとはわかるでしょう。酒についても全く同じです。
4.アルコ-ルと臓器
记のようにアルコールは神経毒であり、神経细胞を変性させる可能性をもっています。これと栄养不良が重なると、アルコ-ル依存者の脳の颁罢写真でみるように、前头叶の萎缩と脳室の拡大がおこります。さらにビタミン叠1が欠乏して脳炎から痴呆に至ることもあります。
次にアルデヒドによる心臓の筋肉に対する伤害が认められます。心筋のエネルギー产生を阻害し左室収缩能力を低下させるわけです。顕微镜的にはミトコンドリアの伤害から心筋の萎缩と変性をきたし、アルコ-ル性心筋症を示します。
次によく知られているように肝臓への傷害です。これは肝細胞への直接作用よりも、脂肪代謝に影響し脂肪肝をきたして腎臓機能障害になるわけです。遂には肝硬変にいたる経過をとります。γGTPという酵素を測定すると50以上の異常値をしめすことで大酒家であることは容易に発見されます。アルコールを毎日160gr以上を10年間続けると肝硬変が発生します。 この様に脳、心臓、肝臓などの重大な臓器に大きな傷害を与えるのがアルコールです。
さらに急性の激しい呕吐などにより、食道の裂创がおこり大量の出血がみられたり、眼球の结膜の出血などがみられます。
健康な场合にも上记の障害がおこるのですが、心臓に隠れた病変がある人が饮酒をすれば少量でも生命にかかわる重大な结果が起こり得ます。また特异な体质で、酒の成分へのアレルギーなどがあればショック状态に陥り早急な手当てが必要なこともあります。それは本人も知らなかったり、他人にはいえないこともありますので、酒の强要はつつしむべきことです。私达は友人がどんな持病をもっているか全て把握してはいませんし、そのようなプライバシーは守ってあげるべきでしょう。「糖尿病だから酒は饮めない」といいたくない人もいて无理に断れずに饮まざるをえないことのないようにしたいものです。